成人の急性気道感染症患者における抗菌薬の適正使用

Ann Intern Med 2016 Jan 19; [e-pub]. (http://dx.doi.org/10.7326/M15-1840)を元にNEJMに不必要な抗菌薬の使用防止を呼び掛けている。以下は南江堂のHPにある要約である。自分の憶えのためにコピーをしておいた。


成人の急性気道感染症患者における抗菌薬の適正使用
Appropriate Antibiotic Use in Adults with Acute Respiratory Tract Infections
2016 February 23
支援組織:American College of Physicians(ACP)、Centers for Disease Control and Prevention(CDC)
ターゲットとする集団:外来診療所で成人に診療を行うすべての臨床家
背景
年間1億回を超える成人の外来受診で抗菌薬が処方されているが、そのうち推定50%は不必要または不適切かもしれない。ACPとCDCが発表したこの文章は、成人の急性気道感染症における抗菌薬適正使用ガイドライン2001年版(NEJM JW Gen Med Apr 15 2001およびAnn Intern Med 2001; 134:479)の更新であり、気管支炎、咽頭炎、および鼻副鼻腔炎の管理についての助言が含まれている。今回の更新では、慢性肺疾患および免疫低下状態のない健康な成人に焦点が当てられている。
要点および推奨事項
合併症のない急性気管支炎
ウイルス性のものが90%を超える。咳嗽が6週間も続くことがあり、軽度の全身症状を伴うこともある。 膿性痰または痰の色の変化は細菌感染症を示すものではない。膿性は、炎症細胞または脱落した粘膜細胞の存在が原因で生じる。 患者は症状緩和(鎮咳薬、去痰薬など)により利益を得るかもしれない。 肺炎と鑑別されなければならない。頻脈、頻呼吸、38度を超える発熱、および胸部聴診異常がなければ、肺炎の可能性は低い。 肺炎の疑いがない限り、臨床家は検査を実施したり、抗菌薬の投与を開始したりすべきではない。
咽頭炎
咽頭炎は多くの場合ウイルス性である。咳嗽や鼻閉、結膜炎、口腔の潰瘍または水疱のある患者では、ウイルス性である可能性が高い。 Centor criteria(病歴での発熱、扁桃滲出物、圧痛を伴う前頸部リンパ節腫脹、咳嗽がない)で3点未満の患者は、A群連鎖球菌感染症である可能性は低く、さらに検査を行う必要はない。 経口抗菌薬(penicillin、amoxicillinなど)は、A群連鎖球菌感染症と確定された場合のみに処方する。
急性鼻副鼻腔炎
急性鼻副鼻腔炎(持続期間範囲1〜33日)の原因は通常、普通感冒に関連するウイルス感染により生じる。症状は鼻閉、膿性鼻汁、上顎歯痛、顔面痛、発熱、および耳痛を含む。 急性細菌性鼻副鼻腔炎がウイルス性上気道感染症(upper respiratory infection:URI)に続発することがある。しかし、ウイルス性URIが細菌性鼻副鼻腔炎を合併する割合は2%未満である。 ウイルス性副鼻腔炎と細菌性副鼻腔炎のX線像は類似しているため、画像診断は有用ではない。 抗菌薬は、症状が10日を超えて持続する患者、重症の患者(39度を超える発熱、膿性鼻汁、連続する3日を超える顔面痛)、または初期の改善後に悪化した患者に対してのみ用いるべきである。2012年版Infectious Diseases of Americaガイドラインは、抗菌薬が必要と考えられる場合には、amoxicillin-clavulanateの使用が望ましいと推奨している。

成人の急性気道感染症患者における抗菌薬の適正使用

プロトンポンプ阻害剤の使用と認知症

JAMA Neurology 2月15日号にプロトンポンプ阻害剤(PPI)の使用と認知症リスクを調べた前向きコホート研究の論文が乗っている。75歳以上の7万人以上の人を2004年から2011年まで調べたところPPIを常用していた人達(2950人、平均年齢83.8歳、女性77.9%)は使用していない人達(70729人、平均年齢83.0歳、女性73.6%)に比べて1.44倍(95%CI,1.36-1.52;P<0.001)認知症のリスクが高いとのことである。最近話題となったPPIとCKDとの関連も含めて、PPIの継続にはそれなりの根拠が必要となってきたようだ。

Association of Proton Pump Inhibitors With Risk of Dementia A Pharmacoepidemiological Claims Data Analysis


がんの終末期をどこでどのように過ごすか  (『おひとりさまの最後』への一つの答え)

米国医学会誌(JAMA)1月19日号の記事から。
米国での研究であるが、その論文では、肺がん、大腸がんで死亡されたMedicare(米国の高齢者向け国家社会保険)を受けている患者さんの家族に患者さんの終末期の過ごし方が良かったかどうかを(亡くなってからではなく)前向きに調査した結果を報告している。全体の51.3%の家族が素晴らしい(exellent)最後だったとするが、集中治療を選択するかどうか、最期をどこで過ごすかどうかによって若干の違いがあることを示した。具体的には、3日を超えるホスピスケアを受けた患者さんの家族では58.8% (352/599)が素晴らしいと答えたが(カッコ内は症例数、以下同様)、ホスピスケアを受けなかったか受けても3日以内であった患者さんの家族 では43.1% (236/547)と少なかった。亡くなる30日前に集中治療室に入った患者さんの家族では45.0% (68/151)で素晴らしかったとしたのに対して集中治療室に入らなかった患者さんの家族では52.3% (520/995)で素晴らしかったと、集中治療室を利用した患者さんの家族で満足度が低い結果であった。同じように病院で亡くなった患者さんの家族の42.2% (194/460)で素晴らしかったと回答したのに対して病院以外で亡くなった患者さんの家族では57.4% (394/686) で素晴らしかったと、病院で亡くなった患者さんの家族で低い結果であった。患者さんが希望された場所で亡くなったかどうかを家族に聞いたところ、ホスピスケアを受けなかったか受けても3日以内であった患者さんでは希望通りであったとするのが40.0% (152/380)であったのに対して、3日を超えるホスピスケアを受けた患者さんでは希望どおりが72.8% (287/394)であった。以上より最後は積極的な治療ではなく、できるだけ自宅またはそれに準じたところで亡くなる方が家族にとってもよく、患者さん自身もホスピスケアを望まれている人が多いとの報告であった。


上記論文の数値を計算し直すとアンケート対象となった高齢末期がん患者のうち59.9%(686/1146)もの人が病院以外で最期を迎えていることに驚いた。日米の医療事情、保険事情の違いがあるが、末期がんに罹患した場合、最後の時を自宅かそれに準じたところで緩和医療を受けながら家族とともに過ごすことが理想なのだろう。
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